浜辺暮らし

束の間の逃避行

【短編】コラプス 第3.5章

街を歩くと、市長選挙の時期らしく、街頭演説のホログラムが各所に立っていたり、IBN(インターブレイン・ネットワーク・システム)を介して投票を呼びかけるメッセージが送信されてきたりと騒々しかった。


そうしたなか街頭のディスプレイでは日本の集団的自衛権に意を持つ活動家達が仮想世界でデモを起こしていた。

聞けば今回の市長選に、かつて日本の自衛のための国際的軍事後方支援を推進した関係者が出馬しているらしく、その者を落選させるべく活動しているとのことだった。


日本の自衛隊は今や、自動同時翻訳技術の進展や防衛予算の対外調達等々の背景から、米国が主導し、インドやオーストラリア、カナダ、日本を首長国とする、PIAP(Pacific and India ocean Alliance of Progressive)加盟国の軍の哨戒・輸送・バックオフィス業務を一挙に引き受けていた。

このことが人によっては不快らしく、時折こうして声を荒げて活動している、そんな感じだ。


オレは市長選や集団的自衛権といったワードをノイズ指定して受信 対象外とし、徐々に拾うべき情報を絞っていった 

 ー 女性、黒髪、長髪、狐目、そして、VOID ー

 

 

 

【短編】コラプス 第5章

橋に続く道の奥から定刻通りに完璧な姿勢制御の下で一切の音を立てることなく、宙に漂う洋館の幽霊のような静けさでバスが近づいてくる。

バス運転手は頭の中では事務仕事をこなしながら、その身体はコードに操られてマリオネットのようにハンドルを操り、微細な軌道修正を担当していた。

 

音もなく空気の揺らぎもなくバスは停車し、人々が乗り込む。

乗込む人々も浮遊する幽霊のように滑らかに淀みなく席に向かう。

乗り口のセンサと頭蓋のスロットに挿されたメモリが通信することで支払等の必要なことは全て処理される。

少し前までは顔認証や仕草認証などによる本人認識、体に埋めたマイクロチップによる非接触型決済が用いられていたが、いよいよこのバス路線でも技術の交替が起きていた。

 

1人、また1人と意識を抜かれた亡者共がタナトスに乗り込んでいく。

そこに、あの女はいなかった。

 

あの日、ボイド ー 空スロットの状態の人間 ーに見えたあの女は何故かバスに乗込むことができ、その狐目で窓の外に広がる市街の自然を見つめながら、どこか微笑んでいるようだった。

 

 

【建築】写真: 佐倉市庁舎

 

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黒川紀章先生による設計。

千葉県佐倉駅近くの坂の上に佇む。

白を基調としたメタボリックな建物。

タンスの引き出しのようで親近感を感じる。

 

 

【短編】コラプス 第四章

自宅を出て20分ほど歩き、市内へ流れ込む川沿いの林のなかにオレはいた。ここは上り坂にあって、川に掛かった橋の袂に佇むバス停を監視できる。

 

バス停には目をグルグルと回す奇人共が10人程並んでいた。皆がそれぞれのライススタイルに合う仮想空間を選択して、ここではないどこかにいる ー これがトリップではないといなら何なんだ ー

 

オレは目を凝らして目的の人物を探す。

一本一本が陽の光を吸収するかのような黒い髪、その長い髪を受け止める豊かな胸、肌は霞のような白さ、背丈は170cm足らず、身幅は痩身、一般的な美しさを抜けたそれだということは多くの同意を得られる容姿だった。

ただ、唯一の違和感 ー その周りをランと睨む狐目の両目はまっすぐに前を睨んでいた ー

 

 

【短編】コラプス 第三章

自動歩行機能をOFFにして外に出るのは久しぶりだ。

 

友人と食事にいくときも、コンビニにいくときも、常に何かしらのメモリをスロットに挿して出かけている。

お気に入りのアーティストのライブ空間にいたり、ドラマを見たりしていたら、あとは勝手に目的の場所に着いてくれている。

 

木々の葉がざわざわと風に吹かれてたてる音、革靴の底がコツコツと石畳みを蹴る音、雑踏のなかの人々の話し声、そんなものをリアルで感じる機会はほぼない。

 

むしろ、リアルの環境に生身の感覚で触れることは非現実的でトリップ感がある。

何よりも道ですれ違う人間たちの異様なふるまい  ー 眼球をぐりぐりと回転させ、ブツブツと何かを呟き、ときには手をピクピクと動かしながら歩いている ー がそれがまたコンピュータのバグのようで、非現実間を助長していた。 

 

人によっては生身の感覚で現実世界を味合うと心身を壊すことがあるらしく、現代病の一つとして扱われている。

 

 ー 最高の世界だろ。

 

ともあれ、オレは目的の場所にで向かう。

どんな状態の何者であるかを気取られぬよう、幾分にも加工された情報ではなく生身に感じ取る情報を得られるよう。

 

 

 

 

 

 

【短編】コラプス 第二章

メザシに味噌汁に白米、漬物という質素な朝飯を済ませ、身支度をする。

 


いつもなら、会社から支給されたメモリーをスロットに挿し、仮想空間上の職場に出勤して、そこでナノサイズの医療ロボットを捜査し、患者の体内で細胞レベルの治療を施す仕事をしている。その間にも肉体的な身体は電気信号で自動操作され、道を歩き、階段を登り、信号機を渡る等、健康を維持するための軽度の運動をこなしている ー  クソみたいな世界だろ。

 


ただし、今日は違った。

オレはスロットに身の回り(よそ様の)のデータを収集してくれる違法なメモリーをスロットに差し込み、玄関を後にする。

 


庭先ではコロが明日に向けて糞をしていた。

【映画感想(素人)】TENET

この監督は何てことをしてくれたんだ!スゴイ!凄すぎる!もう最高!

最高にワケわからなすぎて、自分の脳みそがどっかに行ってしまったのかと探してしまったくらい!

 

ノーラン監督の超難解な頭の中を可視化してしまう映像表現にもう脱帽!

かっこいい画だなぁとアホ眺めしていたら、ん?どゆこと?、わかんねぇ、、、かっこいい画だなぁ、ん?どゆこと?、わかんねぇ、、、の繰り返しの繰り返し。

なんかもう見ているだけで頭がよくなるんじゃないかって思わされる詐欺的作品(映画)!

 

ざくっと理解したところとして(きっと間違ってる)、

今なんてものは存在せず、未来に向かって物事を変えて利益を得る方法と過去に向かって物事を変えて利益を得る方法同士がガチンコしている構図がのみがある世界!で、勝負がつくたびに新しいガチンコが始まり、前回の経験を踏まえて戦うものだから、今回勝負がつく時点や形は前回のものとはことなっていく、そんなことが永遠と繰り返されるエンドレスゲーム!!...といった感じ、わけわからんw

 

まぁでもわけわからんなりに楽しめます。

それは間違いない。アクション多いし。。

 

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