【短編】コラプス 第17章
世の中には虚しい行為とは知っていながらもついやってしまうことがある。
人間とは不思議でここまで社会、科学、情報技術が進化した今でもそれは古来より変わらない悪癖として壊れることなく継承されている。
関係の冷え切った異性に対して答えが返ってこないと分かっていても何かを確かめたくてつい自分のことをどう思っているかと聞いてみたり。
チェーンストア以外の店もない田舎町で何か新しい発見はないかと目を皿にして徘徊してみたり、ネット検索をしてみたり。
人を惹きつけたいのにそれほどの個性がなくて、そこを埋めようと高価なアイテムで着飾ってみたり。
今の自分行為もそういったものと同じく虚しいものだ。
フロートから目が覚めた次の日のことはもう思い出した。
もう分かっているのだ、時刻表にないあのバスはもう来ないし、あの女も来ることはない。
その日オレはあのバスの行先まで行き、あの女を殺めたのだ。