浜辺暮らし

束の間の逃避行

【短編】コラプス 第十四章

オレは家に帰るとそのまま自分の部屋に上がり、フロート行のIBMを挿し込む。

その瞬間オレの意識は再び電脳から自分自身の脳の支配下に戻った。

 

それと同時に一瞬の暗転 - 起動&ログイン - VPBNWの構築 - IBNからのアバター情報の読み込み - 各種情報の紐付け - 明転 -

 

オレは4日前にいたバーで酒を傾けていた。

ガラス張りの高層ビルのワンフロアで傾けるグラスの氷には天蓋のマジックアワーの色合いが映し出されていた。この時点で日中の自身の行動を知らないオレは、先ほど仮想空間上で仕事を終えた直後にこのバーにいることを疑問に思いながらも、酔いのせいかー その程度にしか捉えていなかった。 

 

何杯目かのグラスを空にしたそのとき、フロートでも見かけないほどの女が声をかけてきた - いや、オレはこの女を知っている。記憶が蘇る。覚えている。酒を飲んでお互いもっとハイになろうとしていたところまで。その先はデータが壊れている。

 

その女が妖しげで魅力的な容姿、仕草で寄ってくる。

ー隣良い?

あの日のように言葉を交わし、酒を交わす。オレは壊れたデータの続きを今度こそ見たくて、大袈裟なリアクションを交えて何とか誘い込もうと盛り上がっていた。

女は肩をよせてきて、ささやく。

 

ー特定してくれたのね。あなたの役割はここまで。ありがとう。

 

オレからデータを引き出しながら、女がそういった -。