浜辺暮らし

束の間の逃避行

【短編】コラプス 第四章

自宅を出て20分ほど歩き、市内へ流れ込む川沿いの林のなかにオレはいた。ここは上り坂にあって、川に掛かった橋の袂に佇むバス停を監視できる。

 

バス停には目をグルグルと回す奇人共が10人程並んでいた。皆がそれぞれのライススタイルに合う仮想空間を選択して、ここではないどこかにいる ー これがトリップではないといなら何なんだ ー

 

オレは目を凝らして目的の人物を探す。

一本一本が陽の光を吸収するかのような黒い髪、その長い髪を受け止める豊かな胸、肌は霞のような白さ、背丈は170cm足らず、身幅は痩身、一般的な美しさを抜けたそれだということは多くの同意を得られる容姿だった。

ただ、唯一の違和感 ー その周りをランと睨む狐目の両目はまっすぐに前を睨んでいた ー