浜辺暮らし

束の間の逃避行

【短編】コラプス 第9章

翌日からオレの奇行は始まっていた。

1日目はいつも通りに起床し、窓辺に行き、コロに餌を与え、母親の手作りの朝食を食べ、出勤する。意識は仮想空間のデスクに行き、体はプログラムに操られ無意識的に歩いている。

ただし、いつもとは違う経路を歩いていた。街に向かい、下町の裏路地に入ると、路上に店を構える中古品の露天商等から迷彩柄ポンチョ、トレッキングシューズ、双眼鏡等をDIMと引き換えて購入していた。

その足でそのまま今オレがいるこの場所に立ち、グルグルと回らない目で双眼鏡を覗いていた。

バス停に人が並び、バスが来て、人が乗込む、その様子をじっと見つめている。

メモリの中にいたオレは不気味なくらい静かで、顔に虫が止まっても微動たりともしない、ただの森の一部の塊がそこにある、そんな感じった -