浜辺暮らし

束の間の逃避行

趣味

【短編】コラプス 第16章

深い森の中で白馬が一匹、死に絶えようとしている ー その馬、血を吐きながら、両方の前脚で空を掻いている。血は当たりに撒き散らされ、木々の新緑を天蓋に、その下で朱色の円形の舞台が形成されていた。 否、その舞台よく目を凝らすと、血のみではない。ぶ…

【短編】コラプス 第十四章

オレは家に帰るとそのまま自分の部屋に上がり、フロート行のIBMを挿し込む。 その瞬間オレの意識は再び電脳から自分自身の脳の支配下に戻った。 それと同時に一瞬の暗転 - 起動&ログイン - VPBNWの構築 - IBNからのアバター情報の読み込み - 各種情報の…

【短編】コラプス 第十三章

その日もオレはバス停とメモを見比べていく。 1件1件丁寧にチェックリストを潰していく。 バスが来てバス停に停まり、人が降り、乗り込んで、バスが発車して去っていく。 規則正しく繰り返される営みに沿って、情報の波が押し寄せてくるように錯覚する。 …

【マレーシア】お金関連を調べたメモ

マレーシアの通貨について調べてみる 通貨種類表にするとこんな感じー RMに印刷されている方は誰?マレーシア初代首相のアブゥドル・ラーマンという方とのこと。 1RMはいくら? 1RMで500mlの水を買えるとの情報アリです(目安) 最低賃金は? 2019年からは5.…

【短編】コラプス 第十二章

次の日もオレは林の中にいた - 視線はしきりにバス停と手元のメモを行き来している。 バスの時刻や行先、運転手、乗車する人達がメモと齟齬がないか、素早い手つきでチェックしていく。特に乗車する人達に新しい変化があれば、新たに書き起こしていく。 - …

【短編】コラプス 第十一章

帰宅したオレは玄関先で職場から支給を受けたIBMを耳裏のスロットから抜く。 恐らく仮想空間上での職場では退社の挨拶でも済ませたのだろう。 それと同時に、先ほどまで奇妙な行動をとっていた肉体の支配がHMM(Health Maintenance Memory)から本来の脳に移る…

【唯の独り言】移住の気持ちに向き合う

新型コロナで分断されてしまった世界。 そんな今だけど、考えたい。将来の移住先と生活。 どこに行き、何をすることで生きていくのか。 ただの憧れでしかない移住。現実との折り合いをどこでつけるのか。どんなスタイルなら実現できそうなのか。 若くもない…

【短編】コラプス 第10章

1日目はバスと乗車する人々を観察して終わった。 観察中は、バスの行き先、時刻、車種、運転手、乗車する人の顔、体型、歩き方など、全てを手書きのメモでDB化していた。驚くほどの速度、緻密さで。 薄暗い林の中で、蝸牛のように突き出した双眼鏡から得た情…

【短編】コラプス 第9章

翌日からオレの奇行は始まっていた。 1日目はいつも通りに起床し、窓辺に行き、コロに餌を与え、母親の手作りの朝食を食べ、出勤する。意識は仮想空間のデスクに行き、体はプログラムに操られ無意識的に歩いている。 ただし、いつもとは違う経路を歩いていた…

【短編】コラプス 第八章

判断力を放棄したオレはあの女に誘われるがまま、バーに併設された個室に連れられていった。妖精が馬を森の水辺に優しく曳くように優しくも蠱惑的に、深い苔を踏みしめぬよう注意深くも潔く。 その光景は他者から見れば、単なる家畜。 オレはなされるがまま…

【短編】コラプス 第7章

話しかけられること自体は珍しいことではなかった。そういう役割のNPCが配置されていることもあれば、男を誘うことで金を稼ぎたい女もいる、特に非合法の仮想空間にいれば日常茶飯事だ。 オレはいくつか質問をしてNPCではないことを確認すると、隣の席を許し…

【短編】コラプス 第6章

天井では人面太陽と人面月が食える星の数を競走し、地平線の先では天使と悪魔が雌雄混合でまぐわりあう、天空からも地平からもは聞こえるは凶器に満ちた笑い声。街を覗けば、淫乱下卑。着飾れどたかが放蕩者の群れ。酒に体液、薬に排気ガス、芳しきこの余の…

【短編】コラプス 第3.5章

街を歩くと、市長選挙の時期らしく、街頭演説のホログラムが各所に立っていたり、IBN(インターブレイン・ネットワーク・システム)を介して投票を呼びかけるメッセージが送信されてきたりと騒々しかった。 そうしたなか街頭のディスプレイでは日本の集団的自…