浜辺暮らし

束の間の逃避行

【短編】コラプス 序章

深い森の中で白馬が一匹、死に絶えようとしている ー


その馬、血を吐きながら、両方の前脚で空を掻いている。血は当たりに撒き散らされ、木々の新緑を天蓋に、その下で朱色の円形の舞台が形成されていた。

否、その舞台よく目を凝らすと、血のみではない。ぶつ切りにした大腸のような虫共が蠢いている。

近づいて詳しく見てみると、虫共は馬の後脚から体内を侵し、グニグニと馬の美しい白髪の表皮のもとで、動いている。

この馬も苦しそうかと思いきや、どこか愉悦に浸る目をしている。

快楽の元で死んでゆくのか、そうこの馬の死に様を見極めたその瞬間、オレは白馬に丸呑みにされた。

 

あとはもう一瞬だった。オレは馬の体内の肉に包まれ、押し出されるように深い深いところに落ちていった。


落ちた先には生ぬるさと何も見えないオレだけがあった ー


ヂヂヂ ー オレの今回のトリップはそこで終わった。