浜辺暮らし

束の間の逃避行

【短編】コラプス 第十三章

その日もオレはバス停とメモを見比べていく。

1件1件丁寧にチェックリストを潰していく。

バスが来てバス停に停まり、人が降り、乗り込んで、バスが発車して去っていく。

規則正しく繰り返される営みに沿って、情報の波が押し寄せてくるように錯覚する。

波が寄ってきて、去っていく。

 

また波が来る。その瞬間だった -

オレの目と手は動きを止めた。

手元のメモにも時刻表にもない行先のバスが来たのだ。

目と手が動きを再開する。

そのバス/市民と自然の家行にバス停に並ぶ人の列から男が3人乗り込む。

 

オレは記録を止め、急いで林を出る。

バスが発車し橋を渡り始める。

オレは息を切らして橋のたもとの信号に辿り着く。

信号が変わり、バスが停まる。

オレは信号を渡らずバスの横を抜ける。その途中躓く。

地面に伏したおれはバスの車体の下に発信機を仕組んだ。

 

そしてオレは何もなかったようなフリをしてその場を去った -